メッセージ

令和5年度 3学期終業式 学校長訓話

                     伝えたかったこと

 学年末として4月からの1年を振り返る節目となりました。1学期、2学期、そしてこの学年末までを終えましたが、学期ごとに、頑張ったこと、成長したこと、課題となったことなどを把握し、課題については改善してきましたか。

これまで、始業式や終業式、全校集会でいろいろな話をしてきましたが、この機会に改めて振り返りながら、皆さんに伝えたかったことについてまとめます。

 1学期の始業式…「志(こころざし)」:成し遂げたいことを「志」として持ち、なりたい自分を毎日強く思い、そして必要な行動を続ける。

 5月の全校集会…「聞く姿勢」:話している人に体を向けてきちんとした姿勢で聞くことは、礼儀の根本であり、そこに人の本質が現れる。

 6月の全校集会…「失敗の価値」:失敗を単なる失敗と考えずに、失敗の価値に気づき、失敗を無駄にしないことこそが新たな一歩になる。

 1学期の終業式…「読書の効果」:ボキャブラリー(語彙)を豊かにする読書は、コミュニケーション能力の向上とより深い学びにつながる。

 2学期の始業式…「時を守り、場を清め、礼を正す」:職場や学校において人間関係や信頼関係を築くには、重要となる3つの行動がある。

 11月の全校集会…「活躍している人」:活躍するには挑戦が必要であり、挑戦にはほんの少しの勇気とたゆまぬ努力への決意が必要である。

 2学期の終業式…「目標の実現」:なりたい自分とできる自分の重なりを広げる努力の積み重ねが、実現の可能性を高めることにつながる。

 3学期の始業式…「大人の条件」:大人になることは、当たり前のことが当たり前にできるようになり、内面的にも大人になることである。

 皆さんは、高校または大学などを卒業した後、職場や地域社会で何らかの役割を担うことになります。そこで問われるのが、「社会で必要な資質や能力を身につけているか」「その資質や能力を伸ばすための努力をしてきたか」になります。

 学校は、社会に出るための準備の場として、皆さんに夢や目標に向けて努力を続けることを求めています。また、板野高校の一員として協力して取り組むことも求めています。しかし、それが実践につながるかどうかは皆さんの気持ち次第です。
新年度からのより一層の活躍を期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 3学期始業式 学校長訓話

                      大人の条件

 1月というのは、新しい年を迎え1年間のスタートとなる時期になる一方で、学校生活の中では3学期というまとめの時期でもあります。新年の初めであると同時に年度のまとめにもなるので、ある意味1年間の中で最も大切な時期になると思います。皆さんには、一日一日を大切に過ごしてもらいたいと思います。

 さて、昨日は成人の日でした。成人の日というのは、「大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ます」趣旨の国民の休日です。そして、皆さんも知っているように、民法が改正されて令和4年4月に成年年齢が満18歳に引き下げられました。3年生の多くの人が18歳になっていると思います。

 そこで、「成人」と「大人」を国語辞典で調べると、「成人」とは「心身が発達して一人前になった人。成年に達した人。子どもが成長して大人になること。」となっており、「大人」とは「成長して一人前になった人。成人の年齢に達した人。思慮分別があり、社会的な責任を負える人。」となっています。

 「成人」と「大人」には「一人前」や「成年年齢」という共通する意味もありますが、「大人」には「思慮分別」や「社会的な責任」という意味もあります。従って、「大人」とは「成年に達する」という外面的なことと「分別や責任」という内面的なことの両方が認められてなれるものと思います。

 オランダの教育学者、マルティヌス・ヤン・ランゲフェルドは「大人」を次のように規定しています。
 ①自分自身の行為や失敗に対して責任ある態度がとれる。
 ②社会生活において仲間として責任を分かち合う態度がとれる。
 ③子どもや病人など弱者のための代理人として責任を負う態度がとれる。

 簡単に言えば、自己責任の態度、社会の一員としての自覚、そして思いやりの態度が必要ということだと思います。だとすれば、内面的なことというのは人として当たり前のことばかりです。裏返せば、「大人」になるということは、当たり前のことが当たり前にできるようになることかもしれません。

 18歳の誕生日を迎えれば大人として扱われる一方で、18歳の誕生日を迎えれば大人になれるという単純なものではないと思います。普段から誰かのために何ができるかを考えることも必要だと思います。皆さんが成年に達した時、大人としての態度をとることができることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 2学期終業式 学校長訓話

                      目標の実現

 1年間の学校生活において、最も長い2学期も今日で終えようとしています。今年も残りわずかです。これまで自分が取り組んできたことを振り返ってください。教科等の学習、学校行事、部活動など、目標としていたことが実現できましたか。

 目標を実現できる可能性について、改めて考えてみます。自分の目標というのは「なりたい自分」であり、それに対して、現在の自分というのは「できる自分」であると言えます。そして、「なりたい自分」と「できる自分」の重なる部分(共通部分)が実現できる可能性になると思います。

 まず、大切なことは「なりたい自分」をしっかりと定めることです。理想とする自分をはっきりと描くことです。目標が定まっていないと、目標の実現に向けて努力すべきことが定まらないので目標に近づくことはできません。

 次に、大切なことは「できる自分」を見つめることです。現在の自分にどれだけの力があるのかを知ることです。今の自分にできることが分かっていないと、目標の実現にどれだけの努力が必要となるかも分かりません。

 例えば、進路について考えてみましょう。「なりたい自分」は進路の目標です。その目標を定めるためには、世の中にどんな仕事があり、それを通してどのような生き方があるのかを知る必要があります。

 また、将来の自分像「ライフデザイン」をイメージし、そのためにどの大学に進学すれば良いか、どの企業に就職すれば良いかなど、情報収集をしなくてはいけません。本校は、大学の先生や企業の方との出会いの場を教育活動に多く取り入れています。その出会いを通して「なりたい自分」の幅を広げていきましょう。

 一方で、目標を実現するためには「なりたい自分」と「できる自分」の重なりを大きくする必要があります。定めた目標に向かって自己を高める努力をしなければ、目標が近づいてくることは絶対にありません。

 日頃の学習を1つ1つ丁寧に重ねていくことで学力を向上させるとともに、部活動や総合的な探究の時間等における他者と協働して行う活動の中で、社会力や人間力を高めていきましょう。そして、様々な活動を通して「できる自分」の枠を広げることで「なりたい自分」との重なりを広げていきましょう。

 もうすぐ新しい年を迎えます。2つの自分の重なりを広げる努力の積み重ねが、進路実現の可能性を高めることにつながります。来年を「目標に向かって歩みを止めない」1年にするために、明日からの冬休みを有意義に過ごしてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 全校集会(11月)学校長訓話

活躍している人

 本年度の後半も1ヶ月以上が過ぎましたが、本年度の折り返しとして良いスタートを切ることができていますか。充実した日々を送ることができている人もいれば、ただ漠然と日々を過ごしている人もいると思います。高校時代は人生の中でも大切な時期になります。是非、今日からの時間を大切に過ごしてください。

 さて、スポーツの分野では、サッカー、野球、バスケットボール、ラグビーなど、様々な競技でワールドカップや世界大会が行われています。出場選手が躍動する場面では、勇気や元気をもらいました。来年には夏季オリンピックも開催されます。また、スポーツだけでなく、文化の分野においても多くの人が活躍しています。

 「活躍している人」というのは、天賦の才能もあるかもしれませんが、例外なく才能以上に「努力している人」だと思います。それでは、努力している人とはどんな人だと思いますか。それは、「何かに挑戦している人」だと思います。挑戦するためには、目標を立てることが必要になります。しかし、「自分の目標が何か」「自分の将来の進路は何か」を決めかねている人もいると思います。

 そういった人は、まず、自分の興味や関心は何かを改めて考えてみてください。興味や関心があるものが挑戦できるものになります。そして、自分の長所は何かを考え、自分の長所を伸ばすことに挑戦してみてください。

 しかし、自分の関心や興味、自分の長所が分からないという人もいます。そういった人は、自分の「現在、過去、未来」を考える習慣をつけてください。または、小学校や中学校の頃の自分を振り返ってみてください。そうすれば、自分の関心や興味、自分の長所が見えてくるのではないかと思います。

 人間の能力は、決められた価値基準では計ることができないものであって、一人一人に潜在的な能力が潜んでいます。特に、高校生は、誰でも潜在的な能力を秘めています。高校時代には、この潜在的な能力を発見し、開花させる必要があります。

 そのためには、学習や部活動の未知の領域に踏み込んで挑戦してみてください。しかし、それには新しいことに挑戦する「ほんの少しの勇気」と「たゆまぬ努力への決意」が必要になります。高校時代は、決して長い期間ではありません。ただ漠然と過ごす毎日では、高校生活が一瞬で終わることになります。

 最初にも話しましたが、本年度の折り返しから1ヶ月以上が過ぎました。改めてこれまでの自分を振り返ってください。皆さんが、目標を持って何事にも挑戦し、充実した高校時代となることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

 

令和5年度 2学期始業式 学校長訓話

                   時を守り、場を清め、礼を正す

 2学期が始まりました。1学期の成果や反省を基に、これからどのような学校生活を送ろうとしていますか。以前にも話をしましたが、学校は社会に出るための準備の場になります。皆さんも社会に出てからは、社会の一員として働くようになります。それでは、社会に出て働く上で大切なことは何だと思いますか。

 それぞれの職業で必要となる知識や技術はもちろんですが、企業も学校と同じように組織で動いています。社員が自分勝手に行動しているのではなく、規律ある行動をとっています。そして、お互いにコミュニケーションをとりながら分担して取り組んでいます。つまり、人間関係(信頼関係)が大切ということです。

 今日は、新学期の始まりにあたって、「時を守り、場を清め、礼を正す」という言葉について話をします。この言葉は、教育学者の森信三先生が職場再建の3原則として提唱したものです。学校も職場と同じように多くの人が生活をしています。皆さんには、将来に向けて重要となる3つの行動を身につけて欲しいと思います。

 「時を守り」とは、時間や期限を守るということです。期間を守ることは、相手の時間を大切にすることで、結果として相手を尊重することにつながり、そして、それにより自分の信用を積み重ねることにもつながります。予定の開始5分前に姿勢を正し、心を静め、開始を待つことができていますか。普段の行動を考えてみてください。朝の登校、チャイム着席、提出物の期限を守る・・・・等、時間ギリギリに行動することのないようにしてください。

 「場を清め」とは、掃除や整理・整頓をすることです。その意味は「5K」で表されます。気づく人になれる、心を磨く、謙虚になれる、感動の心を育む、感謝の心が芽生える、ということです。足元のゴミに気づいて拾うことができていますか。拾えばきれいになるだけでなく、感動や感謝が生まれます。学校での自分の身の回りを見てください。掃除、ロッカーや机の中の整理・整頓を心掛けてください。

 「礼を正す」とは、挨拶をすること、返事をすることです。挨拶をすることにより、相手に心を開くことができます。人より先に、誰に会っても、挨拶をすることです。そして,呼ばれたら「ハイ」と返事をすることです。人とのコミュニケーションは、挨拶や返事から始まります。気持ちの良い挨拶や返事をすれば人間関係がよくなります。挨拶や返事は、人間関係をつくる上で基本になると思います。

 例えば、「時間ギリギリで余裕がない」「机の上が片づいていない」「呼ばれても返事をしない」などの行動は、相手に不信感を与えてしまうでしょう。自分の将来のために、すべての人が気持ちよく学校生活を送るために、今日から「時を守り、場を清め、礼を正す」を実践していきましょう。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 1学期終業式 学校長訓話

                      読書の効果

 本校では、平成11年に県内の高校で初めて「朝の10分間読書」を取り入れて、これまで継続し、現在に至っています。また、「図書館だより」の発行やお薦め本を紹介する「ミニ・ビブリオバトル」などを実施しています。本校の特色の一つとして、読書活動の推進に取り組んでいます。

 それでは、そもそも本を読むことの意義とは何でしょうか。私たちは無意識のうちに言葉を駆使して物事を考えています。ボキャブラリー(語彙)が豊かになれば、それだけ深い思考が可能になります。今日は、明日からの夏休みを有意義な期間としてもらうために読書の効果についての話をします。

 英作文も百の単語と千の単語とでは表現できる範囲や深さが自ずと変わってきます。十の食材と百の食材とでは、作ることができる料理のレパートリーが違うことと同じ原理です。ボキャブラリーが増えるごとに相手の言葉を正しく理解し、自分の考えを正確に伝えることができるようになります。

 自分ではなんとなく分かっていても、うまく言葉で言い表せなかったことが、本を読んでいると「自分が言いたかったことはこれだ!」と思う瞬間があります。この時が、優れた著者の言葉によって、自分の考えがはっきりと言語化された瞬間だと思います。読書によって、知識や教養が身につくとともに、想像力も養われます。

 小さい子どもが癇癪を起こして泣き叫ぶのは、自分の伝えたいことがうまく言葉で表せないもどかしさからだと言われています。一方で、大人になると癇癪を起こすことが少なくなるのは、自分が伝えたいことを言葉できちんと表現できるようになるからだと言われています。

 コミュニケーションには、ボキャブラリーというツール(道具)が必要です。読書はボキャブラリーを豊かにします。ボキャブラリーが豊かになればコミュニケーション能力は向上します。つまり、ボキャブラリーを豊かにする読書は、コミュニケーション能力の向上に効果があるということになります。

 勉強をすることの基本は何でしょうか。それは、とにかく自分の中に受け入れることです。理解できなくても耳を傾ける習慣が勉強には求められます。自分に理解できないことを価値がないと切り捨てるのではなく、理解しようと努力すること自体が学びを深めることにつながっていきます。読書も同じです。まずは、書物を手に取ってみましょう。

 集中して読書をする習慣は、皆さんの学びを一段と深めてくれると思います。また、生活する中で人との出会いがあるように、読書では言葉との出会いがあります。その言葉が生涯自分を支え、照らしてくれることもあります。それは、皆さんにとっての名言になると思います。

 明日から夏休みが始まります。普段よりも書物に親しむ時間がとれるかもしれません。その豊かな時間の中で、皆さん一人一人にとっての名言に出会えることを願っています。そして、有意義な夏休みとなることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 全校集会(6月)学校長訓話

                      失敗の価値

 自分が目標としていることにチャレンジした時、成功することもあれば失敗することもあります。どちらかというと、成功することよりも失敗することが多いかもしれません。そこで大切になるのが、失敗した時にどう考えるかです。

 「七転び八起き」ということわざがあります。このことわざは、何度失敗してもあきらめずに立ち上がって努力すること、失敗や敗北にくじけず何度もチャレンジを繰り返すことを示しています。

 私たちは、すべてのことが分かっているわけではありません。日々、新しい発見や出来事もあります。そして、年齢を重ねるごとに、活動範囲が広がるごとに知らないことや経験したことがないことに出会うことが多くなります。初めてのことなので、失敗することが多いと思います。失敗することで悲観もすると思います。

 そういう時、このことわざを思い浮かべると思います。「今回は失敗してしまったが、次回頑張れば成功できるかもしれない」と考えることができます。再度チャレンジしようと頑張る意欲につながります。「七転び八起き」ということわざには、物事を前向きに考えるようにさせる効果があると思います。

 しかし、「なぜ失敗したのか」「どうしたら成功するのか」を深く考えることもなく、「7回失敗しても8回目には成功する」などと何の根拠もなく考えるのであれば、これは少し愚かなことです。失敗から学ぶことがなければ、再度チャレンジしても成功にはつながらないと思います。

 つまり、1回失敗して気づかなければ、7回失敗しても何も変わりません。同じ失敗を繰り返すだけです。失敗を成功につなげることができる人というのは、どのような人でしょう。それは、「成功には失敗してしまった原因と失敗しないための方策を考えることが必要である」と気づいた人だと思います。

 気がつくためには、「転んでもただでは起きぬ」という気持ちが大切になります。このことわざは、どんな事態になっても自分の利益になるものを見つけ出すという、欲深いたとえとして使われていますが、昔の偉大な人物の中でも、失敗からの学びを成功に生かした人は多くいます。失敗なくして成功はありません。

 そういった人たちは、常に「なぜ失敗したのか」「どうしたら成功するのか」を深く考えていたと思います。転んでもただでは起きなかったということです。発明王と言われるトーマス・エジソンの言葉に「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ。」というのがあります。

 失敗を「単なる失敗」と考えずに、「失敗の価値」に気づくことこそが新たな一歩になります。失敗を無駄にしない気持ちが可能性を広げます。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 全校集会(5月)

聞く姿勢

 生徒の皆さんは、毎日授業を受けています。そして、授業の中では、先生方が教科に関することや進路に関することなどを話してくれています。また、学年集会や学校行事なども多くあります。そして、その時にも、先生方は生徒の皆さんに伝えたいことや大切なことを話してくれています。

 これまで、先生方の話を聞く皆さんの姿勢はどうだったでしょうか。人の話を聞く時の基本は、話をしている人の方に体を向けて相手の顔を見ることから始まります。哲学者のマルティン・ブーバーは、名著と言われる「我と汝」の中で、人間関係の基本は対面の関係であると言っています。

 一対一で向き合って話をする関係が人間関係の基本だと聞いても、そんなことは当たり前だと思う人も多いかもしれません。しかし、実際には大勢の中で人の話を聞く時に、本来は一対一の関係であることを忘れ、一対「多」となってしまい「多」の中では目立たないだろうと、話をしている人と向き合っていないこともあります。

 私は教師として、生徒に対して人の話を聞く時の態度や姿勢を教えたり注意をしたりしてきました。また、聞く態度や姿勢を人に教える立場にある自分自身も、常々から話をしている人と向き合うことを心掛けてきました。今も生徒の皆さんが、姿勢を正して私の方にしっかり体を向けて聞いている姿は美しいと思います。

 「躾」という字は、身が美しいと書きます。私たちは、挨拶の仕方やお辞儀の仕方などを幼い頃から教えてもらってきました。それは、きちんとその所作を身につけることで、美しい姿になることを昔の人は長年の経験から分かっていたのでしょう。だからこそ「しつけ」という言葉が「躾」という字になったのだと思います。

 教育学者の森信三先生は、挨拶や返事をすること、脱いだ靴をそろえること、自分が座った椅子を元に戻すこと、目の前の紙くずを拾うことを生涯に渡って実践されました。そのようなことに気を配ることができるようになれば、すべてのことに気を配ることができるようになれると思います。

 人の話を聞く姿勢もそうだと思います。話をしている人に体を向けて聞くことは礼儀の根本のようにも思います。人の話を聞く時に、話をしている人に体を向けてきちんとした姿勢で聞くことは、小さなことに見えますが、その小さなことに人の本質は現れます。そして、その小さなことがすべてのことに通じるのです。

 これからも、授業や学校行事では先生方から話を聞くことが多くあります。また、生徒の皆さんが発表する機会もあります。今日から「聞く姿勢」を意識して、話をしている人に向き合うようにしてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 1学期始業式

志(こころざし)

 新年度が始まりました。今日は、新年度スタートの特別な日です。昨年度の成果や反省を基に、皆さんはこれからどのような学校生活を送ろうと考えていますか。3年生は進路の決定に向けて全力で取り組んでもらいたいと思います。また、2年生は学校の中核となる学年としての活躍を期待しています。

 新年度を迎えて、皆さんには「志」を持ってほしいと思います。では、「志」とは何か。辞書によると「ある方向を目指す気持ち、心に思い決めた目的や目標」とあります。従って、「目的や目標を決めよう」ということにもなります。学習、進路、部活動など、学校生活を送っている今だからこそ、「志」を持ってください。

 皆さんは、「Boys, be ambitious! (少年よ、大志を抱け!)」という言葉を聞いたことがありますか。北海道の札幌農学校(現在の北海道大学)に初代教頭として招かれたウィリアム・スミス・クラーク博士の言葉です。多くの学生たちに勇気と希望を与えました。現在もこの言葉は受け継がれています。

 それでは、「志」を持つためには何が必要でしょうか。それにはまず、これまでで良かったことや反省点を自覚する必要があります。さらに、「過去の自分を見つめ直し、今やるべきことを決め、未来の自分につなげる」というサイクルを作ることが大切になります。

 20世紀を代表する物理学者であるアルバート・アインシュタインの言葉に「Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow.(昨日から学び、今日に生き、明日に希望を持て)」という言葉があります。過去に失敗があったとしても、それを教訓に今後の生き方を決めて、胸を張り、希望を持って未来に向かいましょう。

 しかし、待っているだけでは「志」を実現することはできません。「志」を実現するためには、努力を続けることが必要です。第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンの演説の中の言葉に「Where there is a will, there is a way.(意志あるところに道は開ける)」という言葉があります。

 「道が開けた人とは、何かを成し遂げた人」であり、例外なく「強い意志をもち、努力を継続した人」だと思います。「継続は力なり」「努力なくして成功なし」という言葉にも通じることと思います。

 皆さんには、成し遂げたいことを「志」として持ち、なりたい自分を毎日強く思い、そして必要な行動を続ける1年間にしてもらいたいと思います。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 3学期終業式

伝えたかったこと

 明日からの春休みは,年度末として4月からの1年間を振り返るとともに,新年度に向けての決意を固める節目としても大切な期間になります。皆さんにとって貴重な春休みですので,有意義に過ごしてください。

これまで,始業式や終業式,全校集会でいろいろと話をしてきましたが,本年度最後となるこの機会に,これまでの話を改めて振り返りながら,皆さんに伝えたかったことについてまとめたいと思います。

 1学期の始業式…「板野高校の校是と校訓」:                                                                                自分を高めるには,何事にも誠実に向き合い,努力を続け,前進しようとする姿勢が大切である。

 5月の全校集会…「ワンイヤー,ワンインチ」:                                          組織ではルールを守る必要があり,板野高校の生徒としての自覚や責任ある行動が求められる。

 6月の全校集会…「学ぶことの意義と続けることの大切さ」:                                      学びは視野を広げることにつながり,継続は能力を伸ばすことにつながっていく。

 1学期の終業式…「心をマネジメントすること」:                                     現状と目標のギャップを埋める行動を選択することが,未来の自分を変えることにつながる。

 2学期の始業式…「社会に出て成功する7つの条件」:                                                                          7つの条件は社会で必要となる心掛けであり,学校は社会に出るための準備の場である。

 11月の全校集会…「社会人基礎力」:                                                                                                職場や地域社会で多様な人々と関わり合いながら,活躍し続けるために必要となる能力が求められている。

 2学期の終業式…「取り組む姿勢や心掛け」:                                           努力の本当の意味を知れば,物事に取り組む姿勢が変わり,その後の行動や状況も大きく変わる。

 3学期の始業式…「努力しても損はしない」:                                            努力をすれば,結果が出なくても成功につながる経験が残るので,無駄になる努力は存在しない。

 2月の全校集会…「自律と自立」:                                                     経済的・社会的に独り立ち(自立)をするためには,自分自身をコントロール(自律)できることが必要である。

 皆さんは,高校または大学などを卒業した後,職場や地域社会で何らかの役割を担うことになります。そこで問われるのが,「社会で必要な資質や能力を身につけているか」「その資質や能力を伸ばすための努力をしてきたか」になります。

 学校は,社会に出るための準備の場として,皆さんに夢や目標に向けて努力を続けることを求めています。また,板野高校の一員として協力して取り組むことも求めています。しかし,それが実践につながるかどうかは皆さんの気持ち次第です。
新年度からのより一層の活躍を期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 全校集会(2月)

                        自律と自立

 先週は,生徒の皆さんにとって高校3年間の中でも思い出に残る学校行事がありました。1年生はインターンシップ,2年生は修学旅行を実施しました。インターンシップや修学旅行で多くのことを体験して学んだと思いますが,学んだことをこれからの学校生活に生かすようにしてください。

 また,本年度も残りわずかになりましたが,本年度を振り返ってみてどうですか。充実した日々を送ることができた人もいれば,ただ漠然と日々を過ごしてきたという人もいると思います。高校時代は人生の中でも大切な時期ですので,今日から新年度になるまでの時間を大切に過ごしてください。

 さて,学校は社会に出るための準備の場になります。そのため,学校は教科の内容だけでなく,「時間や期限を守る」「清掃や整理・整頓をする」「挨拶や返事をする」などの基本的な生活習慣についても学ぶ場になります。なぜなら,基本的な生活習慣は,良好な人間関係をつくる上でも大切なことだからです。

 そこで,今後,学校生活を送るにあたって,皆さんに意識してもらいたいことがあります。それは,「じりつ」という言葉です。「「じりつ」という言葉には,「自分を律する」と書く「自律」と「自分で立つ」と書く「自立」とがあります。読み方は同じですが,意味は異なります。

 「自分を律する」と書く「自律」は,他からの影響や制約を受けないで,自分で自分の行動を規制することを言います。「自律した生活を送る」とか「自律の精神を養う」というように使います。

 また,「自分で立つ」と書く「自立」は,他からの援助や管理を受けないで,自分の力だけで物事を行うことを言います。「経済的に自立する」とか「親元から自立する」というように使います。
 
 簡単にまとめると,「自分を律する」と書く「自律」というのは,「自分自身をコントロールする」ことを言い,「自分で立つ」と書く「自立」というのは,「経済的・社会的に独り立ちする」ことを言います。

 どちらの「じりつ」も社会人として必要なことだと思います。そして,自分自身をコントロールできないと,経済的・社会的に独り立ちするのも難しいと思います。学校というのは,この2つの「じりつ」を身につける場なのです。

 学校が社会に出るための準備の場であることを忘れずに,基本的な生活習慣の大切さを常に意識してください。そして,「自律」した生活を送ることで,「自立」できるようにしてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 3学期始業式

努力しても損はしない

 今日から3学期が始まりました。2学期の終業式で「3学期は1年間の総決算,3年生にとっては高校生活の総決算」という話をしましたが,3学期は総決算であるとともに,新年度に向けての準備期間にもなります。年度の節目となる時期ですので,一日一日を大切に過ごしてください。

 さて,皆さんは,これまで入学試験や定期考査など,様々な試験を受けてきたと思います。また,部活動においても大会やコンクールなど,様々な試合に出てきたと思います。これまでも試験や試合などで結果を出すために努力をしてきたと思いますが,改めて努力することの大切さについて考えてみましょう。

〇努力して結果が出ると,自信になる。
 努力して結果が出ると,それまでの取組が成功体験となり,自分の能力や行動を信じることにつながります。努力するモチベーションにもなります。

〇努力せず結果が出ると,傲り(おごり)になる。
 努力しなかったのに偶然にも結果が出ると,自分は優れていると勘違いして油断することにつながります。課題を軽く見るので努力しなくなります。

〇努力せず結果も出ないと,後悔が残る。
 努力していないので結果が出ないことは,よくあることです。努力しなければ結果は出ません。努力しておけばよかったと後で悔やむことになります。

〇努力して結果が出ないとしても,経験が残る。
 努力した結果が出なかったとしても,次のチャレンジにつながる経験が残ります。失敗した経験が,成功に到達するための重要なヒントになります。

 努力すれば結果が出ることが多くなり,出た結果が次の努力につながります。努力と成功がつながっていく好循環になります。努力しないで運よく結果が出ても,傲り(おごり)になり,努力しなくなるのでやがて結果も出なくなります。怠惰と失敗がつながっていく悪循環になります。

 結果を出すためには,努力が必要です。しかし,仮に結果が出なくても,努力すれば一生懸命に取り組んだ経験が残ります。そして,経験から知恵や新たな発想が生まれて,次のチャレンジで成功する可能性が高まります。

 皆さんは,これからも試験や試合などを数多く経験することになります。また,社会に出て働き始めても,自分の力が試される機会に多く出会うと思います。その時,立ち向かって努力をするか,避けて努力をしないかの選択をすることになりますが,皆さんはどちらを選択しますか。

 努力しても結果が自分の思いどおりにならないこともあります。しかし,経験は残るので,「努力しても損はしない」と思います。努力する3学期としてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 2学期終業式

                      取り組む姿勢や心掛け

 1年間の学校生活において,最も長い2学期も今日で終えようとしています。今年も残りわずかです。これまで自分が取り組んできたことを振り返ってください。教科等の学習,学校行事,部活動など,精一杯取り組んできましたか。

 学校生活に限らず,日々の生活の中でも,物事に取り組む姿勢や心掛けによって,その後の状況が大きく変わってしまうことがあります。このことに関して,「一生懸命だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳が出る。」という言葉があります。

一生懸命な取組を心掛けると,物事を多面的に見たり,先を見通して行動したりするようになります。その結果,視野が広がり,知恵や新たな発想が生まれて,成功する可能性が高まります。また,成功することで,主体性や自己肯定感の向上にもつながります。

 一方で,中途半端な取組では上手くいかないことが多くなります。こういう時は得てして,愚痴や不満が出るようになります。その結果,物事がなかなか進まなくなります。また,主体性が失われ,他人の行動や考えに依存したり,誰かの指示を待つようになります。

 さらに,いい加減な取組となると,失敗につながるのは当然ですが,そのいい加減さが故に,その失敗にさえも向き合わなくなってしまいます。つまり,言い訳をすることで,失敗の原因を他人に転嫁したり,問題そのものから逃避したりするようになります。

 また,「努力する人は夢を語り,怠ける人は不満を語る。」という言葉もあります。これからの学習や部活動にどう向き合っていくか,そして,夢を語るようになるか不満を語るようになるかは,皆さんの決断と努力次第です。自分自身の将来を見据えて「これからどう生きるか」を考えてください。

 努力することの本当の意味は,努力することを通して自分をしっかりと見つめ,自分の持っている能力をたくさん見つけ,見つけた能力を最大限発揮させられるかにあると思います。

 3学期は1年間の総決算になります。そのためにも,この冬休みでこれまでの自分を振り返り,さらに伸ばすことや改善することを見つけて,次の飛躍につなげてください。特に,3年生にとっては3学期は高校生活の総決算にもなります。ぜひ気持ちも新たに新年を迎えてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 全校集会(11月)

社会人基礎力

 2学期も半分以上が終わりましたが,希望する進路の実現に向けた取組は進んでいますか。生徒の皆さんは,板野高校卒業後,または大学などの卒業後には何らかの職業に就くことになります。また,職場だけでなく,地域社会の一員としても多様な人々と関わっていくことになります。

 そこで,生徒の皆さんは,「社会人基礎力」という言葉を聞いたことがありますか。「社会人基礎力」とは,職場や地域社会で多様な人々と関わり合いながら,活躍し続けるために必要とされる基礎的な力といわれています。

 職場や地域社会で必要とされる「社会人基礎力」は,3つの能力と12の能力要素から構成されています。今日は,「社会人基礎力」の柱となる3つの能力について紹介します。

 1つめは,「前に踏み出す力(アクション)」です。これは,「一歩前に踏み出し,失敗しても粘り強く取り組む力」のことです。実社会では,正解が1つに定まっているというケースは少ないです。試行錯誤しながら,自ら行動していくことが必要となります。失敗しても,他者と協力しながら,粘り強く取り組む力を身につけることが大切です。

 2つめは,「考え抜く力(シンキング)」です。これは,「疑問を持ち,自ら深く考える力」のことです。物事を改善していくためには,常に問題意識を持ち,課題を発見することが必要となります。その上で,課題を解決するための方法やプロセスについて,十分納得いくまで考える自律的な思考力を身につけることが大切です。

 3つめは,「チームで働く力(チームワーク)」です。これは,「多様な人々とともに,目標に向けて協力する力」のことです。職場や地域社会などでは,仕事の専門化や細分化が進んでおり,組織として何かを成し遂げるためには,多様な人々との協働が必要となります。自分の意見を的確に伝え,意見や立場の異なるメンバーも尊重した上で,目標に向けてともに協力する力を身につけることが大切です。

 それでは,3つの能力を身につけるにはどうすればよいでしょうか。まずは,世の中の出来事を「自分事」として捉えてみましょう。次に,「自分事」として捉えた出来事の解決策を一生懸命考えてみましょう。しかし,解決策が思い浮かばないこともあります。また,他にもっとよい解決策があるかもしれません。その時こそ,解決に向けて様々な人の協力を得るのです。

 生徒の皆さんが,学校生活を通して「社会人基礎力」である3つの能力「アクション,シンキング,チームワーク」を身につけ,将来,社会で活躍する人材となることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 2学期始業式

                    社会に出て成功する7つの条件
 
 今日から2学期が始まりました。1学期の終業式で「心をマネジメントすること」について話をしましたが,有意義な夏休みとすることができたでしょうか。悔いの残る夏休みだった人も,新たな気持ちで2学期をスタートさせてください。

 さて,社会では,様々な分野で活躍して成功している人が多くいます。以前,企業に長く勤めていた方から,社会に出て成功している人の条件について,話を聞いたことがあります。その方の話では,成功している人の条件は7つあるそうです。

1 ゆるぎない強い志(思い)を持っていること
  自分自身の中に,掲げた夢や目標を実現するという「強い思い」がなければ,夢や目標の実現に近づくことはできません。

2 夢や目標の実現に向かって努力を続けること
  大学に入りたいとか,技術者になりたいとか思うだけでなく,夢や目標の実現に向かって「毎日努力する」ことが必要です。

3 常に反省(振り返り)をすること
  取り組んだことがうまくいかなかったり,周囲の人に迷惑をかけたりしたときは,自分自身を「振り返る」ことが大切です。

4 変化や区切りをチャンスと考えること
  新学期や新年度になったときなどを「絶好のチャンス」と考えて生活を見直すことが,新たなスタートの第一歩になります。

5 相手の立場に立って行動すること
  自分と異なる考え方や意見を持つ人に対しても,耳を傾けて「一緒に考える」ことで,自分の考え方や視野が広がります。

6 感謝する気持ちを持っていること
  周囲の人が支えてくれていることへの「気づきと感謝の気持ち」が,自信につながり,毎日努力するエネルギーになります。

7 平凡なことをやり続けること
  周囲の人と関わる中で大切なことは,挨拶をする,約束を守る,遅刻をしないなど,当たり前のことを「続ける」ことです。

 社会に出て成功する条件といいましたが,この条件は学校においても大切なことです。また,社会に出て働き始めるといろいろな問題にぶつかりますが,問題を解決するには知恵が必要です。

 学校は社会に出るための準備の場です。今日から7つの条件を心掛けながら,幅広く知識を習得して知恵を出すことができるように学びを深めてください。そして,有意義な2学期となることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄 

令和4年度 1学期終業式

 心をマネジメントすること

 1学期が終了しますが,この機会に4月からの学校生活を振り返ってみてください。1学期の学校生活を振り返ると,これまでの成果と課題が見えてくると思います。成果と課題が見えてくると,夏休みを有意義な時間とすることができ,2学期からのスタートがスムーズになります。

 さて,3年生にとっては,進路選択もいよいよ大詰めになります。夏は雌雄を決する天王山ですから,就職する人も進学する人も,悔いのないように全力で頑張りましょう。夢の実現のためには,大志を抱き,果敢に挑戦することが必要です。そのために自分の将来をイメージし,具体的な行動計画を立てなければなりません。

 具体的な進学先,就職先,資格取得を考えたら,その目標のレベルと現在の自分がもっている力のギャップとを客観的に認識し,そのギャップを埋めるための努力をしなければなりません。この現状をしっかり把握し,目標とのギャップを埋めていくための行動を「マネジメント」といいます。

 「マネジメント」により,様々な行動をコントロールすることで,目標に対する考えや態度を変えたりモチベーション(やる気)を維持したりすることができ,行動様式を変えることもできます。そして,この「マネジメント」の原動力こそが,皆さんの「心」です。

 ですから,「現状をしっかり把握し,目標とのギャップを埋めていく」という基本を,皆さんの「心」の中に据えることが必要です。何ができていなくて,何ができるようになりたいのか,何が足りなくて,どこまで到達しなければならないのか,これらを「心」に訴えながら行動することが大切なのです。例えば,なりたい自分になるための言葉を声に出したり書き出したりすることも有効だと思います。

 40日に近い夏休み,この時間を生かすも殺すも皆さんの「心」次第です。勉強や資格取得に励む,部活動に頑張る,映画や芸術を堪能する,多くの本を読んで知識の獲得をする。皆さんはどんな夏休みを過ごすのでしょうか。この時間を有意義に使うか,無為に過ごしてしまうかでは,大げさに言えば,この先の皆さんの未来を大きく変えることになります。

 他人と過去は変えられませんが,「心をマネジメントすること」で,自分と未来は変えられます。つまり,これからの自分の選択次第で,未来の自分を変えることができるということです。大きく変化する社会では,「マネジメント能力を持った人材」が求められています。だらだら過ごす夏休みではなく,挑戦し続ける「チャレンジの夏」となるようにしてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 全校集会(6月)

                   学ぶことの意義と続けることの大切さ
 
 学校というのは,教科等の学習,学校行事,部活動等の様々な活動を通して,多くのことを学ぶ場になります。学校では,多くのことを学ぶことができるように工夫を凝らしていますが,皆さんは「学ぶことの意義」は何だと思いますか。もちろん,自分の目標である進学や就職に向けて,様々な活動に取り組み,「学ぶ」ことを通して,進路を切り拓いていくというのも大きな理由だと思います。

 しかし,進学や就職という目標が達成できれば「学ぶ」必要はなくなるのでしょうか。進学や就職をすれば,新たな課題が生じることもあります。新たな課題となると,従来のやり方では解決できないかもしれません。やり方を工夫したり変えたりする必要が出てくるかもしれません。そのような時には,課題をこれまでとは違った視点から見ること(多面的な視点や広い視野)が必要になります。

 「学ぶことの意義」を表す言葉として,「学者如登山(学ぶ者山に登るが如し)」があります。この言葉には,学ぶことは山に登るのと同じように,決して容易ではないという意味があります。また,一歩一歩高い所に登るに従って,次第に視界が開け広々と見えるようになるのと同じように,学べば学ぶほど視野や見識が広がっていくという意味もあります。「学ぶ」ことは,努力と苦労を伴いますが,視野を広げる貴重な機会になると思います。

 また,一時的な学びでは,なかなか自分のものにはなりません。何事も基礎的・基本的なことを,繰り返し繰り返し取り組むことで,少しずつ定着していきます。自分が描いている夢と自分が置かれている現在の状況との間には,大きな隔たりがあることも少なからずあります。その隔たりを埋めていく唯一の手立てとしても,学びを定着させるための基礎基本の繰り返しが最も重要なポイントになります。

 「続けることの大切さ」を表す言葉として,「凡事徹底(ぼんじてってい)」があります。この言葉は,何でもないような当たり前のことを徹底的に行うことや,当たり前のことを他の追随を許さないほど極めることを示しています。つまり,普通のことを徹底してやり続けることが,最終的には非凡な成果をもたらすことを意味しています。「続ける」ことは,目標や夢の実現につながると思います。

 生徒の皆さんには,高校生の今だからこそ「学ぶことの意義と続けることの大切さ」について深く考えてもらいたいと思います。「学ぶ」ことで自分の見方や考え方を広げ,「続ける」ことで学んだことを自分のものとすることが,自分を大きく成長させることにつながります。学び続ける姿勢を大切にしてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 全校集会(5月)

                        ワンイヤー,ワンインチ

 社会に様々な法律があるように,学校にも様々なルールがあります。学校では,学習面でのルールに加えて,頭髪・服装や遅刻等の生活面でのルールもあります。学校にルールがあるのはどうしてだと思いますか。集団生活を送る中で,ルールが必要であることを示している言葉が,「ワンイヤー,ワンインチ」です。

 「ワンイヤー,ワンインチ」というのは,「1年間に1インチ(1インチ=25.4ミリメートル)」という意味ですが,これは,イギリス海軍が軍艦の乗組員に対して与えている警句(短く巧みな表現で,真理を鋭くついた言葉)になります。

 軍艦には何千人という乗組員が勤務しています。軍艦が港に停泊するごとに,乗組員の一人一人が「これくらい」と思って私物を持ち込むと,その分重くなっていくので,軍艦は1年に1インチずつ沈んでいきます。私物が多く持ち込まれることによって,毎年1インチずつ沈むので,速力は落ちるし,正確な舵取りが出来なくなっていきます。

 その結果,いざ戦いとなった時,本来の力が発揮できず負けてしまいます。だから,個人としてどんなに持ち込みたいものがあっても,決められた重さ以上,持ち込むことを厳しく禁じているのです。

 このことは,集団生活を送る者にとって,個人としてどんなにしたいこと,反対にしたくないことであっても,集団の生命を守るために,ルールは厳しく守ることを求めているのです。

 もちろん,この例は,生命に関わる極端な例ですが,集団が力を発揮するには,その集団に所属する個人それぞれが自律していなければならないと思います。自律とは,自ら律すること,セルフ・コントロールすることです。

 しかし,その自律の基準が個人それぞれで違っていると,不公平が生じて協調性がなくなり,組織としての集団を維持することできなくなります。集団の秩序を保ち,集団としての目標に向かってまとまって進むには,自律の基準となるルールが必要であると思います。

 生徒の皆さんには,一人一人が板野高校の一員であることを自覚し,学校のルールを守り,責任ある行動を心がけることで,伝統ある板野高校を今後に引き継いでいってほしいと思います。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 1学期始業式

 板野高校の校是と校訓

 板野高校は,明治39年に開校し,今年で創立116年目を迎えます。これまで,「耕不尽」を校是とし,「誠実・努力・前進」の校訓のもと,人格の形成と豊かな人間性の涵養を教育の中心課題に据え,勉学,スポーツ,芸術・文化等の各分野で,積極的な取組を続けています。

 今年度,板野高校に赴任して,板野高校の校是である「耕不尽」と校訓である「誠実・努力・前進」について自分なりに考えてみました。

 校是とは,学校設立に対する思いや根本精神を,短い言葉であらわしたものです。「耕不尽」は,「耕せども尽きず」で「田畑は耕せば耕すほど,土地が肥えて作物も良く実るがその工程には終わりがない」という意味になります。

 つまり,勉学,スポーツ,芸術・文化等にも終わりはなく,やり続けることの大切さや不断の努力を惜しまない姿勢を示していると思います。夢中になれるものがあるというのは素敵なことです。生徒の皆さんの耕したいものは何ですか?見つかっていない場合は,今一度,自分を見つめ直してみましょう。

 校訓とは,学校が掲げている目標や指針で,生徒の皆さんと教職員が,同じ方向に向かって進んでいくことができるようにするためのものです。「誠実・努力・前進」は,様々な課題に対して「誠実」に向き合うことの大切さを示しており,さらに,新しい時代を切り拓き,激動の社会に立ち向かうために,常に「努力」し,挑戦し,「前進」していこうとする姿勢が必要であることを示していると思います。

 「誠実」は,「直面する課題を自分事として捉えて,その課題に立ち向かう」ことからはじまり,「努力」は,「やれない理由ではなく,やれること,やる方法を考える」ことからはじまり,「前進」は,「やれることを,まず一つやってみる」ことからはじまると思います。目標や夢を実現するために,普段から心掛けて実践してみましょう。

 AIやIoTといった技術が進展し,大きく変化するこれからの社会を生き抜くのに必要な力は,多様で複雑な課題に対して,「自ら考える力」と「他者と協働する力」と言われています。二つの力を身に付けるには,校是や校訓を忘れずに,勉学,スポーツ,芸術・文化等に積極的に取り組むことが大切です。

 生徒の皆さんにとって,有意義な高校生活となるよう,何事にもチャレンジをしてください。夢が実現できることを願っています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄