メッセージ

令和4年度 全校集会(5月)

                        ワンイヤー,ワンインチ

 社会に様々な法律があるように,学校にも様々なルールがあります。学校では,学習面でのルールに加えて,頭髪・服装や遅刻等の生活面でのルールもあります。学校にルールがあるのはどうしてだと思いますか。集団生活を送る中で,ルールが必要であることを示している言葉が,「ワンイヤー,ワンインチ」です。

 「ワンイヤー,ワンインチ」というのは,「1年間に1インチ(1インチ=25.4ミリメートル)」という意味ですが,これは,イギリス海軍が軍艦の乗組員に対して与えている警句(短く巧みな表現で,真理を鋭くついた言葉)になります。

 軍艦には何千人という乗組員が勤務しています。軍艦が港に停泊するごとに,乗組員の一人一人が「これくらい」と思って私物を持ち込むと,その分重くなっていくので,軍艦は1年に1インチずつ沈んでいきます。私物が多く持ち込まれることによって,毎年1インチずつ沈むので,速力は落ちるし,正確な舵取りが出来なくなっていきます。

 その結果,いざ戦いとなった時,本来の力が発揮できず負けてしまいます。だから,個人としてどんなに持ち込みたいものがあっても,決められた重さ以上,持ち込むことを厳しく禁じているのです。

 このことは,集団生活を送る者にとって,個人としてどんなにしたいこと,反対にしたくないことであっても,集団の生命を守るために,ルールは厳しく守ることを求めているのです。

 もちろん,この例は,生命に関わる極端な例ですが,集団が力を発揮するには,その集団に所属する個人それぞれが自律していなければならないと思います。自律とは,自ら律すること,セルフ・コントロールすることです。

 しかし,その自律の基準が個人それぞれで違っていると,不公平が生じて協調性がなくなり,組織としての集団を維持することできなくなります。集団の秩序を保ち,集団としての目標に向かってまとまって進むには,自律の基準となるルールが必要であると思います。

 生徒の皆さんには,一人一人が板野高校の一員であることを自覚し,学校のルールを守り,責任ある行動を心がけることで,伝統ある板野高校を今後に引き継いでいってほしいと思います。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和4年度 1学期始業式

 板野高校の校是と校訓

 板野高校は,明治39年に開校し,今年で創立116年目を迎えます。これまで,「耕不尽」を校是とし,「誠実・努力・前進」の校訓のもと,人格の形成と豊かな人間性の涵養を教育の中心課題に据え,勉学,スポーツ,芸術・文化等の各分野で,積極的な取組を続けています。

 今年度,板野高校に赴任して,板野高校の校是である「耕不尽」と校訓である「誠実・努力・前進」について自分なりに考えてみました。

 校是とは,学校設立に対する思いや根本精神を,短い言葉であらわしたものです。「耕不尽」は,「耕せども尽きず」で「田畑は耕せば耕すほど,土地が肥えて作物も良く実るがその工程には終わりがない」という意味になります。

 つまり,勉学,スポーツ,芸術・文化等にも終わりはなく,やり続けることの大切さや不断の努力を惜しまない姿勢を示していると思います。夢中になれるものがあるというのは素敵なことです。生徒の皆さんの耕したいものは何ですか?見つかっていない場合は,今一度,自分を見つめ直してみましょう。

 校訓とは,学校が掲げている目標や指針で,生徒の皆さんと教職員が,同じ方向に向かって進んでいくことができるようにするためのものです。「誠実・努力・前進」は,様々な課題に対して「誠実」に向き合うことの大切さを示しており,さらに,新しい時代を切り拓き,激動の社会に立ち向かうために,常に「努力」し,挑戦し,「前進」していこうとする姿勢が必要であることを示していると思います。

 「誠実」は,「直面する課題を自分事として捉えて,その課題に立ち向かう」ことからはじまり,「努力」は,「やれない理由ではなく,やれること,やる方法を考える」ことからはじまり,「前進」は,「やれることを,まず一つやってみる」ことからはじまると思います。目標や夢を実現するために,普段から心掛けて実践してみましょう。

 AIやIoTといった技術が進展し,大きく変化するこれからの社会を生き抜くのに必要な力は,多様で複雑な課題に対して,「自ら考える力」と「他者と協働する力」と言われています。二つの力を身に付けるには,校是や校訓を忘れずに,勉学,スポーツ,芸術・文化等に積極的に取り組むことが大切です。

 生徒の皆さんにとって,有意義な高校生活となるよう,何事にもチャレンジをしてください。夢が実現できることを願っています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄