メッセージ

令和5年度 1学期始業式

志(こころざし)

 新年度が始まりました。今日は、新年度スタートの特別な日です。昨年度の成果や反省を基に、皆さんはこれからどのような学校生活を送ろうと考えていますか。3年生は進路の決定に向けて全力で取り組んでもらいたいと思います。また、2年生は学校の中核となる学年としての活躍を期待しています。

 新年度を迎えて、皆さんには「志」を持ってほしいと思います。では、「志」とは何か。辞書によると「ある方向を目指す気持ち、心に思い決めた目的や目標」とあります。従って、「目的や目標を決めよう」ということにもなります。学習、進路、部活動など、学校生活を送っている今だからこそ、「志」を持ってください。

 皆さんは、「Boys, be ambitious! (少年よ、大志を抱け!)」という言葉を聞いたことがありますか。北海道の札幌農学校(現在の北海道大学)に初代教頭として招かれたウィリアム・スミス・クラーク博士の言葉です。多くの学生たちに勇気と希望を与えました。現在もこの言葉は受け継がれています。

 それでは、「志」を持つためには何が必要でしょうか。それにはまず、これまでで良かったことや反省点を自覚する必要があります。さらに、「過去の自分を見つめ直し、今やるべきことを決め、未来の自分につなげる」というサイクルを作ることが大切になります。

 20世紀を代表する物理学者であるアルバート・アインシュタインの言葉に「Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow.(昨日から学び、今日に生き、明日に希望を持て)」という言葉があります。過去に失敗があったとしても、それを教訓に今後の生き方を決めて、胸を張り、希望を持って未来に向かいましょう。

 しかし、待っているだけでは「志」を実現することはできません。「志」を実現するためには、努力を続けることが必要です。第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンの演説の中の言葉に「Where there is a will, there is a way.(意志あるところに道は開ける)」という言葉があります。

 「道が開けた人とは、何かを成し遂げた人」であり、例外なく「強い意志をもち、努力を継続した人」だと思います。「継続は力なり」「努力なくして成功なし」という言葉にも通じることと思います。

 皆さんには、成し遂げたいことを「志」として持ち、なりたい自分を毎日強く思い、そして必要な行動を続ける1年間にしてもらいたいと思います。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 全校集会(5月)

聞く姿勢

 生徒の皆さんは、毎日授業を受けています。そして、授業の中では、先生方が教科に関することや進路に関することなどを話してくれています。また、学年集会や学校行事なども多くあります。そして、その時にも、先生方は生徒の皆さんに伝えたいことや大切なことを話してくれています。

 これまで、先生方の話を聞く皆さんの姿勢はどうだったでしょうか。人の話を聞く時の基本は、話をしている人の方に体を向けて相手の顔を見ることから始まります。哲学者のマルティン・ブーバーは、名著と言われる「我と汝」の中で、人間関係の基本は対面の関係であると言っています。

 一対一で向き合って話をする関係が人間関係の基本だと聞いても、そんなことは当たり前だと思う人も多いかもしれません。しかし、実際には大勢の中で人の話を聞く時に、本来は一対一の関係であることを忘れ、一対「多」となってしまい「多」の中では目立たないだろうと、話をしている人と向き合っていないこともあります。

 私は教師として、生徒に対して人の話を聞く時の態度や姿勢を教えたり注意をしたりしてきました。また、聞く態度や姿勢を人に教える立場にある自分自身も、常々から話をしている人と向き合うことを心掛けてきました。今も生徒の皆さんが、姿勢を正して私の方にしっかり体を向けて聞いている姿は美しいと思います。

 「躾」という字は、身が美しいと書きます。私たちは、挨拶の仕方やお辞儀の仕方などを幼い頃から教えてもらってきました。それは、きちんとその所作を身につけることで、美しい姿になることを昔の人は長年の経験から分かっていたのでしょう。だからこそ「しつけ」という言葉が「躾」という字になったのだと思います。

 教育学者の森信三先生は、挨拶や返事をすること、脱いだ靴をそろえること、自分が座った椅子を元に戻すこと、目の前の紙くずを拾うことを生涯に渡って実践されました。そのようなことに気を配ることができるようになれば、すべてのことに気を配ることができるようになれると思います。

 人の話を聞く姿勢もそうだと思います。話をしている人に体を向けて聞くことは礼儀の根本のようにも思います。人の話を聞く時に、話をしている人に体を向けてきちんとした姿勢で聞くことは、小さなことに見えますが、その小さなことに人の本質は現れます。そして、その小さなことがすべてのことに通じるのです。

 これからも、授業や学校行事では先生方から話を聞くことが多くあります。また、生徒の皆さんが発表する機会もあります。今日から「聞く姿勢」を意識して、話をしている人に向き合うようにしてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 全校集会(6月)学校長訓話

                      失敗の価値

 自分が目標としていることにチャレンジした時、成功することもあれば失敗することもあります。どちらかというと、成功することよりも失敗することが多いかもしれません。そこで大切になるのが、失敗した時にどう考えるかです。

 「七転び八起き」ということわざがあります。このことわざは、何度失敗してもあきらめずに立ち上がって努力すること、失敗や敗北にくじけず何度もチャレンジを繰り返すことを示しています。

 私たちは、すべてのことが分かっているわけではありません。日々、新しい発見や出来事もあります。そして、年齢を重ねるごとに、活動範囲が広がるごとに知らないことや経験したことがないことに出会うことが多くなります。初めてのことなので、失敗することが多いと思います。失敗することで悲観もすると思います。

 そういう時、このことわざを思い浮かべると思います。「今回は失敗してしまったが、次回頑張れば成功できるかもしれない」と考えることができます。再度チャレンジしようと頑張る意欲につながります。「七転び八起き」ということわざには、物事を前向きに考えるようにさせる効果があると思います。

 しかし、「なぜ失敗したのか」「どうしたら成功するのか」を深く考えることもなく、「7回失敗しても8回目には成功する」などと何の根拠もなく考えるのであれば、これは少し愚かなことです。失敗から学ぶことがなければ、再度チャレンジしても成功にはつながらないと思います。

 つまり、1回失敗して気づかなければ、7回失敗しても何も変わりません。同じ失敗を繰り返すだけです。失敗を成功につなげることができる人というのは、どのような人でしょう。それは、「成功には失敗してしまった原因と失敗しないための方策を考えることが必要である」と気づいた人だと思います。

 気がつくためには、「転んでもただでは起きぬ」という気持ちが大切になります。このことわざは、どんな事態になっても自分の利益になるものを見つけ出すという、欲深いたとえとして使われていますが、昔の偉大な人物の中でも、失敗からの学びを成功に生かした人は多くいます。失敗なくして成功はありません。

 そういった人たちは、常に「なぜ失敗したのか」「どうしたら成功するのか」を深く考えていたと思います。転んでもただでは起きなかったということです。発明王と言われるトーマス・エジソンの言葉に「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ。」というのがあります。

 失敗を「単なる失敗」と考えずに、「失敗の価値」に気づくことこそが新たな一歩になります。失敗を無駄にしない気持ちが可能性を広げます。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 1学期終業式 学校長訓話

                      読書の効果

 本校では、平成11年に県内の高校で初めて「朝の10分間読書」を取り入れて、これまで継続し、現在に至っています。また、「図書館だより」の発行やお薦め本を紹介する「ミニ・ビブリオバトル」などを実施しています。本校の特色の一つとして、読書活動の推進に取り組んでいます。

 それでは、そもそも本を読むことの意義とは何でしょうか。私たちは無意識のうちに言葉を駆使して物事を考えています。ボキャブラリー(語彙)が豊かになれば、それだけ深い思考が可能になります。今日は、明日からの夏休みを有意義な期間としてもらうために読書の効果についての話をします。

 英作文も百の単語と千の単語とでは表現できる範囲や深さが自ずと変わってきます。十の食材と百の食材とでは、作ることができる料理のレパートリーが違うことと同じ原理です。ボキャブラリーが増えるごとに相手の言葉を正しく理解し、自分の考えを正確に伝えることができるようになります。

 自分ではなんとなく分かっていても、うまく言葉で言い表せなかったことが、本を読んでいると「自分が言いたかったことはこれだ!」と思う瞬間があります。この時が、優れた著者の言葉によって、自分の考えがはっきりと言語化された瞬間だと思います。読書によって、知識や教養が身につくとともに、想像力も養われます。

 小さい子どもが癇癪を起こして泣き叫ぶのは、自分の伝えたいことがうまく言葉で表せないもどかしさからだと言われています。一方で、大人になると癇癪を起こすことが少なくなるのは、自分が伝えたいことを言葉できちんと表現できるようになるからだと言われています。

 コミュニケーションには、ボキャブラリーというツール(道具)が必要です。読書はボキャブラリーを豊かにします。ボキャブラリーが豊かになればコミュニケーション能力は向上します。つまり、ボキャブラリーを豊かにする読書は、コミュニケーション能力の向上に効果があるということになります。

 勉強をすることの基本は何でしょうか。それは、とにかく自分の中に受け入れることです。理解できなくても耳を傾ける習慣が勉強には求められます。自分に理解できないことを価値がないと切り捨てるのではなく、理解しようと努力すること自体が学びを深めることにつながっていきます。読書も同じです。まずは、書物を手に取ってみましょう。

 集中して読書をする習慣は、皆さんの学びを一段と深めてくれると思います。また、生活する中で人との出会いがあるように、読書では言葉との出会いがあります。その言葉が生涯自分を支え、照らしてくれることもあります。それは、皆さんにとっての名言になると思います。

 明日から夏休みが始まります。普段よりも書物に親しむ時間がとれるかもしれません。その豊かな時間の中で、皆さん一人一人にとっての名言に出会えることを願っています。そして、有意義な夏休みとなることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 2学期始業式 学校長訓話

                   時を守り、場を清め、礼を正す

 2学期が始まりました。1学期の成果や反省を基に、これからどのような学校生活を送ろうとしていますか。以前にも話をしましたが、学校は社会に出るための準備の場になります。皆さんも社会に出てからは、社会の一員として働くようになります。それでは、社会に出て働く上で大切なことは何だと思いますか。

 それぞれの職業で必要となる知識や技術はもちろんですが、企業も学校と同じように組織で動いています。社員が自分勝手に行動しているのではなく、規律ある行動をとっています。そして、お互いにコミュニケーションをとりながら分担して取り組んでいます。つまり、人間関係(信頼関係)が大切ということです。

 今日は、新学期の始まりにあたって、「時を守り、場を清め、礼を正す」という言葉について話をします。この言葉は、教育学者の森信三先生が職場再建の3原則として提唱したものです。学校も職場と同じように多くの人が生活をしています。皆さんには、将来に向けて重要となる3つの行動を身につけて欲しいと思います。

 「時を守り」とは、時間や期限を守るということです。期間を守ることは、相手の時間を大切にすることで、結果として相手を尊重することにつながり、そして、それにより自分の信用を積み重ねることにもつながります。予定の開始5分前に姿勢を正し、心を静め、開始を待つことができていますか。普段の行動を考えてみてください。朝の登校、チャイム着席、提出物の期限を守る・・・・等、時間ギリギリに行動することのないようにしてください。

 「場を清め」とは、掃除や整理・整頓をすることです。その意味は「5K」で表されます。気づく人になれる、心を磨く、謙虚になれる、感動の心を育む、感謝の心が芽生える、ということです。足元のゴミに気づいて拾うことができていますか。拾えばきれいになるだけでなく、感動や感謝が生まれます。学校での自分の身の回りを見てください。掃除、ロッカーや机の中の整理・整頓を心掛けてください。

 「礼を正す」とは、挨拶をすること、返事をすることです。挨拶をすることにより、相手に心を開くことができます。人より先に、誰に会っても、挨拶をすることです。そして,呼ばれたら「ハイ」と返事をすることです。人とのコミュニケーションは、挨拶や返事から始まります。気持ちの良い挨拶や返事をすれば人間関係がよくなります。挨拶や返事は、人間関係をつくる上で基本になると思います。

 例えば、「時間ギリギリで余裕がない」「机の上が片づいていない」「呼ばれても返事をしない」などの行動は、相手に不信感を与えてしまうでしょう。自分の将来のために、すべての人が気持ちよく学校生活を送るために、今日から「時を守り、場を清め、礼を正す」を実践していきましょう。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 全校集会(11月)学校長訓話

活躍している人

 本年度の後半も1ヶ月以上が過ぎましたが、本年度の折り返しとして良いスタートを切ることができていますか。充実した日々を送ることができている人もいれば、ただ漠然と日々を過ごしている人もいると思います。高校時代は人生の中でも大切な時期になります。是非、今日からの時間を大切に過ごしてください。

 さて、スポーツの分野では、サッカー、野球、バスケットボール、ラグビーなど、様々な競技でワールドカップや世界大会が行われています。出場選手が躍動する場面では、勇気や元気をもらいました。来年には夏季オリンピックも開催されます。また、スポーツだけでなく、文化の分野においても多くの人が活躍しています。

 「活躍している人」というのは、天賦の才能もあるかもしれませんが、例外なく才能以上に「努力している人」だと思います。それでは、努力している人とはどんな人だと思いますか。それは、「何かに挑戦している人」だと思います。挑戦するためには、目標を立てることが必要になります。しかし、「自分の目標が何か」「自分の将来の進路は何か」を決めかねている人もいると思います。

 そういった人は、まず、自分の興味や関心は何かを改めて考えてみてください。興味や関心があるものが挑戦できるものになります。そして、自分の長所は何かを考え、自分の長所を伸ばすことに挑戦してみてください。

 しかし、自分の関心や興味、自分の長所が分からないという人もいます。そういった人は、自分の「現在、過去、未来」を考える習慣をつけてください。または、小学校や中学校の頃の自分を振り返ってみてください。そうすれば、自分の関心や興味、自分の長所が見えてくるのではないかと思います。

 人間の能力は、決められた価値基準では計ることができないものであって、一人一人に潜在的な能力が潜んでいます。特に、高校生は、誰でも潜在的な能力を秘めています。高校時代には、この潜在的な能力を発見し、開花させる必要があります。

 そのためには、学習や部活動の未知の領域に踏み込んで挑戦してみてください。しかし、それには新しいことに挑戦する「ほんの少しの勇気」と「たゆまぬ努力への決意」が必要になります。高校時代は、決して長い期間ではありません。ただ漠然と過ごす毎日では、高校生活が一瞬で終わることになります。

 最初にも話しましたが、本年度の折り返しから1ヶ月以上が過ぎました。改めてこれまでの自分を振り返ってください。皆さんが、目標を持って何事にも挑戦し、充実した高校時代となることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

 

令和5年度 2学期終業式 学校長訓話

                      目標の実現

 1年間の学校生活において、最も長い2学期も今日で終えようとしています。今年も残りわずかです。これまで自分が取り組んできたことを振り返ってください。教科等の学習、学校行事、部活動など、目標としていたことが実現できましたか。

 目標を実現できる可能性について、改めて考えてみます。自分の目標というのは「なりたい自分」であり、それに対して、現在の自分というのは「できる自分」であると言えます。そして、「なりたい自分」と「できる自分」の重なる部分(共通部分)が実現できる可能性になると思います。

 まず、大切なことは「なりたい自分」をしっかりと定めることです。理想とする自分をはっきりと描くことです。目標が定まっていないと、目標の実現に向けて努力すべきことが定まらないので目標に近づくことはできません。

 次に、大切なことは「できる自分」を見つめることです。現在の自分にどれだけの力があるのかを知ることです。今の自分にできることが分かっていないと、目標の実現にどれだけの努力が必要となるかも分かりません。

 例えば、進路について考えてみましょう。「なりたい自分」は進路の目標です。その目標を定めるためには、世の中にどんな仕事があり、それを通してどのような生き方があるのかを知る必要があります。

 また、将来の自分像「ライフデザイン」をイメージし、そのためにどの大学に進学すれば良いか、どの企業に就職すれば良いかなど、情報収集をしなくてはいけません。本校は、大学の先生や企業の方との出会いの場を教育活動に多く取り入れています。その出会いを通して「なりたい自分」の幅を広げていきましょう。

 一方で、目標を実現するためには「なりたい自分」と「できる自分」の重なりを大きくする必要があります。定めた目標に向かって自己を高める努力をしなければ、目標が近づいてくることは絶対にありません。

 日頃の学習を1つ1つ丁寧に重ねていくことで学力を向上させるとともに、部活動や総合的な探究の時間等における他者と協働して行う活動の中で、社会力や人間力を高めていきましょう。そして、様々な活動を通して「できる自分」の枠を広げることで「なりたい自分」との重なりを広げていきましょう。

 もうすぐ新しい年を迎えます。2つの自分の重なりを広げる努力の積み重ねが、進路実現の可能性を高めることにつながります。来年を「目標に向かって歩みを止めない」1年にするために、明日からの冬休みを有意義に過ごしてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 3学期始業式 学校長訓話

                      大人の条件

 1月というのは、新しい年を迎え1年間のスタートとなる時期になる一方で、学校生活の中では3学期というまとめの時期でもあります。新年の初めであると同時に年度のまとめにもなるので、ある意味1年間の中で最も大切な時期になると思います。皆さんには、一日一日を大切に過ごしてもらいたいと思います。

 さて、昨日は成人の日でした。成人の日というのは、「大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ます」趣旨の国民の休日です。そして、皆さんも知っているように、民法が改正されて令和4年4月に成年年齢が満18歳に引き下げられました。3年生の多くの人が18歳になっていると思います。

 そこで、「成人」と「大人」を国語辞典で調べると、「成人」とは「心身が発達して一人前になった人。成年に達した人。子どもが成長して大人になること。」となっており、「大人」とは「成長して一人前になった人。成人の年齢に達した人。思慮分別があり、社会的な責任を負える人。」となっています。

 「成人」と「大人」には「一人前」や「成年年齢」という共通する意味もありますが、「大人」には「思慮分別」や「社会的な責任」という意味もあります。従って、「大人」とは「成年に達する」という外面的なことと「分別や責任」という内面的なことの両方が認められてなれるものと思います。

 オランダの教育学者、マルティヌス・ヤン・ランゲフェルドは「大人」を次のように規定しています。
 ①自分自身の行為や失敗に対して責任ある態度がとれる。
 ②社会生活において仲間として責任を分かち合う態度がとれる。
 ③子どもや病人など弱者のための代理人として責任を負う態度がとれる。

 簡単に言えば、自己責任の態度、社会の一員としての自覚、そして思いやりの態度が必要ということだと思います。だとすれば、内面的なことというのは人として当たり前のことばかりです。裏返せば、「大人」になるということは、当たり前のことが当たり前にできるようになることかもしれません。

 18歳の誕生日を迎えれば大人として扱われる一方で、18歳の誕生日を迎えれば大人になれるという単純なものではないと思います。普段から誰かのために何ができるかを考えることも必要だと思います。皆さんが成年に達した時、大人としての態度をとることができることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 3学期終業式 学校長訓話

                     伝えたかったこと

 学年末として4月からの1年を振り返る節目となりました。1学期、2学期、そしてこの学年末までを終えましたが、学期ごとに、頑張ったこと、成長したこと、課題となったことなどを把握し、課題については改善してきましたか。

これまで、始業式や終業式、全校集会でいろいろな話をしてきましたが、この機会に改めて振り返りながら、皆さんに伝えたかったことについてまとめます。

 1学期の始業式…「志(こころざし)」:成し遂げたいことを「志」として持ち、なりたい自分を毎日強く思い、そして必要な行動を続ける。

 5月の全校集会…「聞く姿勢」:話している人に体を向けてきちんとした姿勢で聞くことは、礼儀の根本であり、そこに人の本質が現れる。

 6月の全校集会…「失敗の価値」:失敗を単なる失敗と考えずに、失敗の価値に気づき、失敗を無駄にしないことこそが新たな一歩になる。

 1学期の終業式…「読書の効果」:ボキャブラリー(語彙)を豊かにする読書は、コミュニケーション能力の向上とより深い学びにつながる。

 2学期の始業式…「時を守り、場を清め、礼を正す」:職場や学校において人間関係や信頼関係を築くには、重要となる3つの行動がある。

 11月の全校集会…「活躍している人」:活躍するには挑戦が必要であり、挑戦にはほんの少しの勇気とたゆまぬ努力への決意が必要である。

 2学期の終業式…「目標の実現」:なりたい自分とできる自分の重なりを広げる努力の積み重ねが、実現の可能性を高めることにつながる。

 3学期の始業式…「大人の条件」:大人になることは、当たり前のことが当たり前にできるようになり、内面的にも大人になることである。

 皆さんは、高校または大学などを卒業した後、職場や地域社会で何らかの役割を担うことになります。そこで問われるのが、「社会で必要な資質や能力を身につけているか」「その資質や能力を伸ばすための努力をしてきたか」になります。

 学校は、社会に出るための準備の場として、皆さんに夢や目標に向けて努力を続けることを求めています。また、板野高校の一員として協力して取り組むことも求めています。しかし、それが実践につながるかどうかは皆さんの気持ち次第です。
新年度からのより一層の活躍を期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和6年度 第1学期 始業式 訓話 「心がけてほしい5つお願い」

  おはようございます。校長の野田耕市郎といいます。漢字をよく間違われるので
詳しく言いますと、野原の野。田んぼの田。耕は耕運機の耕。耕すという字です。
市は市場の市。郎は昔から男の子に使われる太郎とか次郎とかの郎で「おおざとつ
くり」の郎です。続けると「野原を田んぼに耕して、そこで採れたお米なんかを市
場に持って行く男」と覚えてもらうと間違わないかな、と思います。
 実は、板野高校は私の初任の学校であり、大好きな学校です。28年前、初任3
年目の冬に、もう一年残してほしいと当時の校長先生にお願いに行ったことが昨日
のように思い出されます。もしかすると皆さんのお父さんやお母さんの中に私を知
っている人がいるかも知れません。
 さて、年度当初の挨拶ということで、みなさんに心がけてほしい5つのお願いが
あります。覚えやすいように頭文字を「かきくけこ」に合わせてきたので日々の生
活の中で是非意識して生活してください。
 「か」は、考えること。
 勉強もそうですが、考えることは非常に大事なことです。夕方のTV番組で「突
破ファイル」という番組の中で、窮地に追い込まれた主人公が自分自身に「考えろ、
考えろ、考えろ」と言い聞かせるシーンがよく出てきます。苦しいときこそ考える。
これをしていいのかを考えてから動く。効率よく物事を行うためにどうすればいい
かを考える。全て大事なことです。
 「き」は、気をつけること。気を配ること。
 気をつけるは、交通事故に遭わないよう、事故や犯罪に巻き込まれないよう気を
つけるです。気を配るは、周りに元気のない人はいないか。困っている人はいない
か。いるならどう声をかけるか。思いやりを持って行動してくださいということで
す。
 「く」は、くさらないこと。
 人生うまくいかないことはあります。失敗もあります。そこでくさっていては誰
も見向きもしてくれません。「笑う門には福きたる」という言葉がいうように気分
を換え、ポジティブに考え、前向きに次の行動をしましょう。
 「け」は、健康であること。健康的で元気な挨拶をすること。
 先ほども挨拶をしましたが、これは皆さん全員がすることに意義があります。お
越しになったお客さんに、すれ違う生徒全員が挨拶をすれば、驚くでしょうし、面
白いと思いませんか。こうなれば、学校自体が変わります。
 「こ」は、コンプライアンス。
 法令を守るという意味ですが、校則などのきまりやルール・マナーを守ろうとい
うことです。時間を守ること・約束を守ることや人を傷つけないことも広い意味で
コンプライアンスかもしれません。
 この「かきくけこ」は、社会に出ても使えるので心のどこかに留め置いててくだ
さい。
 残された高校生活。夢ややりたいことを「志」というなら、その「志」を掲げ、
「誠実・努力・前進」の校訓のもと、「誠実」に取り組み、「努力」を続け、コツ
コツと「前進」していってください。そうやって歩んでいる皆さんを先生方は応援
してくれます。頑張っていきましょう。