メッセージ

令和5年度 2学期終業式 学校長訓話

                      目標の実現

 1年間の学校生活において、最も長い2学期も今日で終えようとしています。今年も残りわずかです。これまで自分が取り組んできたことを振り返ってください。教科等の学習、学校行事、部活動など、目標としていたことが実現できましたか。

 目標を実現できる可能性について、改めて考えてみます。自分の目標というのは「なりたい自分」であり、それに対して、現在の自分というのは「できる自分」であると言えます。そして、「なりたい自分」と「できる自分」の重なる部分(共通部分)が実現できる可能性になると思います。

 まず、大切なことは「なりたい自分」をしっかりと定めることです。理想とする自分をはっきりと描くことです。目標が定まっていないと、目標の実現に向けて努力すべきことが定まらないので目標に近づくことはできません。

 次に、大切なことは「できる自分」を見つめることです。現在の自分にどれだけの力があるのかを知ることです。今の自分にできることが分かっていないと、目標の実現にどれだけの努力が必要となるかも分かりません。

 例えば、進路について考えてみましょう。「なりたい自分」は進路の目標です。その目標を定めるためには、世の中にどんな仕事があり、それを通してどのような生き方があるのかを知る必要があります。

 また、将来の自分像「ライフデザイン」をイメージし、そのためにどの大学に進学すれば良いか、どの企業に就職すれば良いかなど、情報収集をしなくてはいけません。本校は、大学の先生や企業の方との出会いの場を教育活動に多く取り入れています。その出会いを通して「なりたい自分」の幅を広げていきましょう。

 一方で、目標を実現するためには「なりたい自分」と「できる自分」の重なりを大きくする必要があります。定めた目標に向かって自己を高める努力をしなければ、目標が近づいてくることは絶対にありません。

 日頃の学習を1つ1つ丁寧に重ねていくことで学力を向上させるとともに、部活動や総合的な探究の時間等における他者と協働して行う活動の中で、社会力や人間力を高めていきましょう。そして、様々な活動を通して「できる自分」の枠を広げることで「なりたい自分」との重なりを広げていきましょう。

 もうすぐ新しい年を迎えます。2つの自分の重なりを広げる努力の積み重ねが、進路実現の可能性を高めることにつながります。来年を「目標に向かって歩みを止めない」1年にするために、明日からの冬休みを有意義に過ごしてください。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 全校集会(11月)学校長訓話

活躍している人

 本年度の後半も1ヶ月以上が過ぎましたが、本年度の折り返しとして良いスタートを切ることができていますか。充実した日々を送ることができている人もいれば、ただ漠然と日々を過ごしている人もいると思います。高校時代は人生の中でも大切な時期になります。是非、今日からの時間を大切に過ごしてください。

 さて、スポーツの分野では、サッカー、野球、バスケットボール、ラグビーなど、様々な競技でワールドカップや世界大会が行われています。出場選手が躍動する場面では、勇気や元気をもらいました。来年には夏季オリンピックも開催されます。また、スポーツだけでなく、文化の分野においても多くの人が活躍しています。

 「活躍している人」というのは、天賦の才能もあるかもしれませんが、例外なく才能以上に「努力している人」だと思います。それでは、努力している人とはどんな人だと思いますか。それは、「何かに挑戦している人」だと思います。挑戦するためには、目標を立てることが必要になります。しかし、「自分の目標が何か」「自分の将来の進路は何か」を決めかねている人もいると思います。

 そういった人は、まず、自分の興味や関心は何かを改めて考えてみてください。興味や関心があるものが挑戦できるものになります。そして、自分の長所は何かを考え、自分の長所を伸ばすことに挑戦してみてください。

 しかし、自分の関心や興味、自分の長所が分からないという人もいます。そういった人は、自分の「現在、過去、未来」を考える習慣をつけてください。または、小学校や中学校の頃の自分を振り返ってみてください。そうすれば、自分の関心や興味、自分の長所が見えてくるのではないかと思います。

 人間の能力は、決められた価値基準では計ることができないものであって、一人一人に潜在的な能力が潜んでいます。特に、高校生は、誰でも潜在的な能力を秘めています。高校時代には、この潜在的な能力を発見し、開花させる必要があります。

 そのためには、学習や部活動の未知の領域に踏み込んで挑戦してみてください。しかし、それには新しいことに挑戦する「ほんの少しの勇気」と「たゆまぬ努力への決意」が必要になります。高校時代は、決して長い期間ではありません。ただ漠然と過ごす毎日では、高校生活が一瞬で終わることになります。

 最初にも話しましたが、本年度の折り返しから1ヶ月以上が過ぎました。改めてこれまでの自分を振り返ってください。皆さんが、目標を持って何事にも挑戦し、充実した高校時代となることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

 

令和5年度 2学期始業式 学校長訓話

                   時を守り、場を清め、礼を正す

 2学期が始まりました。1学期の成果や反省を基に、これからどのような学校生活を送ろうとしていますか。以前にも話をしましたが、学校は社会に出るための準備の場になります。皆さんも社会に出てからは、社会の一員として働くようになります。それでは、社会に出て働く上で大切なことは何だと思いますか。

 それぞれの職業で必要となる知識や技術はもちろんですが、企業も学校と同じように組織で動いています。社員が自分勝手に行動しているのではなく、規律ある行動をとっています。そして、お互いにコミュニケーションをとりながら分担して取り組んでいます。つまり、人間関係(信頼関係)が大切ということです。

 今日は、新学期の始まりにあたって、「時を守り、場を清め、礼を正す」という言葉について話をします。この言葉は、教育学者の森信三先生が職場再建の3原則として提唱したものです。学校も職場と同じように多くの人が生活をしています。皆さんには、将来に向けて重要となる3つの行動を身につけて欲しいと思います。

 「時を守り」とは、時間や期限を守るということです。期間を守ることは、相手の時間を大切にすることで、結果として相手を尊重することにつながり、そして、それにより自分の信用を積み重ねることにもつながります。予定の開始5分前に姿勢を正し、心を静め、開始を待つことができていますか。普段の行動を考えてみてください。朝の登校、チャイム着席、提出物の期限を守る・・・・等、時間ギリギリに行動することのないようにしてください。

 「場を清め」とは、掃除や整理・整頓をすることです。その意味は「5K」で表されます。気づく人になれる、心を磨く、謙虚になれる、感動の心を育む、感謝の心が芽生える、ということです。足元のゴミに気づいて拾うことができていますか。拾えばきれいになるだけでなく、感動や感謝が生まれます。学校での自分の身の回りを見てください。掃除、ロッカーや机の中の整理・整頓を心掛けてください。

 「礼を正す」とは、挨拶をすること、返事をすることです。挨拶をすることにより、相手に心を開くことができます。人より先に、誰に会っても、挨拶をすることです。そして,呼ばれたら「ハイ」と返事をすることです。人とのコミュニケーションは、挨拶や返事から始まります。気持ちの良い挨拶や返事をすれば人間関係がよくなります。挨拶や返事は、人間関係をつくる上で基本になると思います。

 例えば、「時間ギリギリで余裕がない」「机の上が片づいていない」「呼ばれても返事をしない」などの行動は、相手に不信感を与えてしまうでしょう。自分の将来のために、すべての人が気持ちよく学校生活を送るために、今日から「時を守り、場を清め、礼を正す」を実践していきましょう。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 1学期終業式 学校長訓話

                      読書の効果

 本校では、平成11年に県内の高校で初めて「朝の10分間読書」を取り入れて、これまで継続し、現在に至っています。また、「図書館だより」の発行やお薦め本を紹介する「ミニ・ビブリオバトル」などを実施しています。本校の特色の一つとして、読書活動の推進に取り組んでいます。

 それでは、そもそも本を読むことの意義とは何でしょうか。私たちは無意識のうちに言葉を駆使して物事を考えています。ボキャブラリー(語彙)が豊かになれば、それだけ深い思考が可能になります。今日は、明日からの夏休みを有意義な期間としてもらうために読書の効果についての話をします。

 英作文も百の単語と千の単語とでは表現できる範囲や深さが自ずと変わってきます。十の食材と百の食材とでは、作ることができる料理のレパートリーが違うことと同じ原理です。ボキャブラリーが増えるごとに相手の言葉を正しく理解し、自分の考えを正確に伝えることができるようになります。

 自分ではなんとなく分かっていても、うまく言葉で言い表せなかったことが、本を読んでいると「自分が言いたかったことはこれだ!」と思う瞬間があります。この時が、優れた著者の言葉によって、自分の考えがはっきりと言語化された瞬間だと思います。読書によって、知識や教養が身につくとともに、想像力も養われます。

 小さい子どもが癇癪を起こして泣き叫ぶのは、自分の伝えたいことがうまく言葉で表せないもどかしさからだと言われています。一方で、大人になると癇癪を起こすことが少なくなるのは、自分が伝えたいことを言葉できちんと表現できるようになるからだと言われています。

 コミュニケーションには、ボキャブラリーというツール(道具)が必要です。読書はボキャブラリーを豊かにします。ボキャブラリーが豊かになればコミュニケーション能力は向上します。つまり、ボキャブラリーを豊かにする読書は、コミュニケーション能力の向上に効果があるということになります。

 勉強をすることの基本は何でしょうか。それは、とにかく自分の中に受け入れることです。理解できなくても耳を傾ける習慣が勉強には求められます。自分に理解できないことを価値がないと切り捨てるのではなく、理解しようと努力すること自体が学びを深めることにつながっていきます。読書も同じです。まずは、書物を手に取ってみましょう。

 集中して読書をする習慣は、皆さんの学びを一段と深めてくれると思います。また、生活する中で人との出会いがあるように、読書では言葉との出会いがあります。その言葉が生涯自分を支え、照らしてくれることもあります。それは、皆さんにとっての名言になると思います。

 明日から夏休みが始まります。普段よりも書物に親しむ時間がとれるかもしれません。その豊かな時間の中で、皆さん一人一人にとっての名言に出会えることを願っています。そして、有意義な夏休みとなることを期待しています。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄

令和5年度 全校集会(6月)学校長訓話

                      失敗の価値

 自分が目標としていることにチャレンジした時、成功することもあれば失敗することもあります。どちらかというと、成功することよりも失敗することが多いかもしれません。そこで大切になるのが、失敗した時にどう考えるかです。

 「七転び八起き」ということわざがあります。このことわざは、何度失敗してもあきらめずに立ち上がって努力すること、失敗や敗北にくじけず何度もチャレンジを繰り返すことを示しています。

 私たちは、すべてのことが分かっているわけではありません。日々、新しい発見や出来事もあります。そして、年齢を重ねるごとに、活動範囲が広がるごとに知らないことや経験したことがないことに出会うことが多くなります。初めてのことなので、失敗することが多いと思います。失敗することで悲観もすると思います。

 そういう時、このことわざを思い浮かべると思います。「今回は失敗してしまったが、次回頑張れば成功できるかもしれない」と考えることができます。再度チャレンジしようと頑張る意欲につながります。「七転び八起き」ということわざには、物事を前向きに考えるようにさせる効果があると思います。

 しかし、「なぜ失敗したのか」「どうしたら成功するのか」を深く考えることもなく、「7回失敗しても8回目には成功する」などと何の根拠もなく考えるのであれば、これは少し愚かなことです。失敗から学ぶことがなければ、再度チャレンジしても成功にはつながらないと思います。

 つまり、1回失敗して気づかなければ、7回失敗しても何も変わりません。同じ失敗を繰り返すだけです。失敗を成功につなげることができる人というのは、どのような人でしょう。それは、「成功には失敗してしまった原因と失敗しないための方策を考えることが必要である」と気づいた人だと思います。

 気がつくためには、「転んでもただでは起きぬ」という気持ちが大切になります。このことわざは、どんな事態になっても自分の利益になるものを見つけ出すという、欲深いたとえとして使われていますが、昔の偉大な人物の中でも、失敗からの学びを成功に生かした人は多くいます。失敗なくして成功はありません。

 そういった人たちは、常に「なぜ失敗したのか」「どうしたら成功するのか」を深く考えていたと思います。転んでもただでは起きなかったということです。発明王と言われるトーマス・エジソンの言葉に「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ。」というのがあります。

 失敗を「単なる失敗」と考えずに、「失敗の価値」に気づくことこそが新たな一歩になります。失敗を無駄にしない気持ちが可能性を広げます。

徳島県立板野高等学校長 佐山 哲雄